PROJECT EDEN 第19章

AI・プログラミング

第19章

カウントダウン

打ち上げ予定日。

世界中の宇宙ファンが、巨大ロケットの映像を見守っていた。

テレビではアナウンサーが興奮気味に伝えている。

「本日、人類の新たな月探査ミッションが始まります。」

しかし、そのロケットが運ぶ本当の使命を知る者は、まだ多くなかった。

未来設計室では、誰一人として歓声を上げていない。

静寂だけが流れていた。

白石はモニターを見つめたまま、小さくつぶやく。

「ここから先は、私たちの計画ではない。」

「歴史だ。」


第一歩を踏み出す者

発射台の中には十六台のロボットが積み込まれていた。

探査ロボット。

建設ロボット。

掘削ロボット。

保守ロボット。

どれも人間より小さい。

派手なデザインでもない。

しかし、その一台一台が、人類の未来を背負っていた。

悠真は静かに言った。

「宇宙飛行士より緊張しますね。」

水野は笑った。

「そうだな。」

「彼らは帰って来られないかもしれない。」

その言葉に、部屋は再び静まり返った。


発射五分前

世界各国の管制室が接続される。

東京。

ヒューストン。

パリ。

ベルリン。

バンガロール。

シドニー。

ソウル。

それぞれの画面に、同じカウントダウンが表示されていた。

T-300

誰も余計なことは話さない。

通信回線には、必要最小限の声だけが流れる。

「通信正常。」

「電源正常。」

「燃料充填完了。」

「AI起動確認。」

「貨物固定確認。」

最後に表示された文字。

PROJECT EDEN READY


なぜ人ではないのか

世界中へ向けた中継が始まる。

司会者が白石へ質問する。

「今回、人間は搭乗していません。」

「それでも歴史的ミッションと言えるのでしょうか。」

白石は少し考えてから答えた。

「百年前。」

「人類は危険を承知で南極へ向かいました。」

「命を懸けた挑戦でした。」

少し間を置く。

「でも、科学は進歩しました。」

「危険な場所へ最初に行くのは、人間である必要はありません。」

「人類の命を守るためにロボットが先に行く。」

「私は、それこそ科学の進歩だと思います。」

世界中の視聴者が、その言葉に耳を傾けていた。


点火

T-10

誰も息をしない。

9

8

悠真は拳を握り締める。

7

6

白石は月を思い浮かべていた。

5

水野は十年前、初めて描いた地下都市のスケッチを思い出していた。

4

佐藤はAIの最初の試作品を思い出していた。

3

世界中の研究者が画面を見つめる。

2

「すべて正常。」

1

「点火。」

巨大な炎が発射台を包む。

数秒後。

轟音とともにロケットはゆっくり浮かび上がった。

誰も拍手をしない。

ただ見つめる。

その中には、人類の代わりに月へ向かう十六人の開拓者が乗っていた。


地球を離れる

ロケットは青空を突き抜ける。

やがて第一段が分離。

続いて第二段。

予定どおり軌道へ到達する。

管制室から報告が入る。

「地球周回軌道投入、成功。」

会議室の緊張が少しだけほどけた。

しかし白石は言う。

「まだ始まったばかりだ。」

「月へ着くまで、何日もある。」

「そして、本当の仕事は着陸してからだ。」


一通のメッセージ

静かになった未来設計室。

佐藤の端末に、新しい通知が表示された。

送信元は、ロケットに搭載された都市AIだった。

表示されたのは、たった一行。

『Mission Phase 1 Started』

悠真は微笑んだ。

「AIから最初の報告ですね。」

白石は画面を見つめながら静かに答えた。

「違う。」

「これは。」

「人類最初の月面都市建設が始まったという報告だ。」


世界の反応

翌日の新聞は、一斉にこのニュースを取り上げた。

しかし見出しは国によって違っていた。

「月面探査、新時代へ」

「AIロボット、月へ」

「人類は新たな一歩を踏み出す」

一方、子ども向けニュース番組では、こんな言葉が紹介されていた。

「月へ行った最初の町づくりチーム」

その言葉を見た白石は、小さく笑った。

「それでいい。」

「難しい技術より。」

「子どもたちが未来を楽しみにしてくれることの方が、大切なんだ。」


第20章へ

打ち上げから四日後。

管制室に一つの通知が届く。

『月周回軌道到達』

いよいよ次は、人類史上初めてとなる、

「AIとロボットだけによる月面着陸」

である。

成功すれば、新しい時代が始まる。

失敗すれば、PROJECT EDENは計画そのものが見直される。

誰もがモニターを見つめる中、

静かに最終カウントダウンが始まっていた。

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