PROJECT EDEN 第17章

AI・プログラミング

第17章

人類初の準備委員会

「PROJECT EDENを国際共同検討課題として採択する。」

その一文は、世界中の宇宙開発関係者へ配信された。

大きなニュースではなかった。

テレビも大きくは報じない。

新聞では小さな国際面の記事だった。

しかし、その知らせは世界中の研究所では静かな驚きをもって迎えられていた。

宇宙開発の歴史で初めて、

「人間より先にAIとロボットが都市を建設する」

という構想が、正式な国際検討課題になったのである。


ジュネーブ会議

二か月後。

スイス・ジュネーブ。

国際宇宙協力機構本部。

巨大な円卓には二十か国以上の代表が座っていた。

宇宙機関。

大学。

建設会社。

AI企業。

ロボットメーカー。

資源開発企業。

通信会社。

エネルギー企業。

これまで別々に研究してきた専門家たちが、初めて一つの目的のために集まっていた。

白石は会場を見渡した。

「ようやくスタートラインですね。」

隣に座る悠真は静かにうなずいた。


最初に決めること

議長が口を開いた。

「まず確認します。」

「PROJECT EDENは誰のものですか。」

会場が静まり返る。

アメリカ代表が答える。

「参加国全体。」

ヨーロッパ代表。

「人類全体。」

日本代表。

「未来世代。」

様々な意見が出る。

白石は静かに立ち上がった。

「私の答えは、一つです。」

スクリーンに映し出されたのは、青く輝く地球だった。

「PROJECT EDENは。」

「まだ生まれていない子どもたちのものです。」

誰も言葉を発しなかった。

「私たちは建設者ではありません。」

「未来への橋を架ける世代です。」

会場は静かな拍手に包まれた。


国ではなく専門分野

議論は次のテーマへ進む。

「どの国が何を担当するのか。」

しかし白石は首を横に振る。

「担当は国で決めません。」

「専門分野で決めます。」

スクリーンには新しい組織図が映る。

宇宙輸送部会

大型ロケット。

貨物着陸船。

軌道輸送。

AI部会

都市AI。

建設AI。

保守AI。

サイバーセキュリティ。

建設部会

地下都市。

レゴリス利用。

3Dプリンティング。

生命維持部会

空気。

水。

食料。

医療。

エネルギー部会

太陽光。

蓄電。

熱制御。

「国籍は問いません。」

「その分野で世界最高の知識を持つ人が参加する。」

「それがPROJECT EDENです。」


AI憲章

午後の議題はAIだった。

佐藤が壇上へ立つ。

「都市をAIが管理する以上。」

「AIにもルールが必要です。」

スクリーンにはタイトルが表示された。

PROJECT EDEN AI憲章(草案)

第一条。

AIは人命を最優先とする。

第二条。

AIは重要な判断を記録し、人間が確認できるようにする。

第三条。

AIは人間に提案するが、最終決定は人間が行う。

第四条。

AIは学習を続けるが、安全性が確認された内容のみを都市へ反映する。

悠真はその文章を見ながら思った。

これは単なるAIのルールではない。

未来の社会そのもののルールなのだ。


新しい役職

議論の最後。

議長が笑顔で言った。

「PROJECT EDENには、新しい職業が必要になります。」

会場がざわめく。

「月面都市建設責任者。」

「宇宙建築士。」

「AI都市管理者。」

「宇宙資源技術者。」

「地球と月を結ぶ物流設計者。」

悠真は思わず笑った。

「子どもたちの夢が増えますね。」

白石も笑う。

「それこそ、この計画の一番の成果かもしれません。」


世界の若者たち

会議の終盤。

議長が一枚のアンケート結果を映した。

世界中の大学へ送った質問だった。

『PROJECT EDENに参加したいですか。』

回答数は十万件を超えていた。

結果は、

91%が「参加したい」と回答。

AI研究者。

建築家。

医師。

農業研究者。

プログラマー。

宇宙飛行士志望。

世界中の若者たちが、自分も関わりたいと答えていた。

白石は静かに目を閉じる。

「もう私たちだけの計画ではありませんね。」


第18章へ

会議終了後。

未来設計室へ一本の連絡が入る。

「第一回無人探査ロボット選定試験を開始します。」

いよいよ設計図ではなく、

本当に月へ向かうロボットが選ばれる。

悠真は試験会場の写真を見つめながら、小さくつぶやいた。

「ここから先は、もうシミュレーションじゃない。」

「現実が始まるんだ。」

そしてPROJECT EDENは、

構想から実行へ、

静かに、しかし確実に動き始めた。

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