PROJECT EDEN 第15章

AI・プログラミング

第15章

AIが描いた未来

未来設計室。

大型スクリーンには、世界中のスーパーコンピューターと接続されたAIシミュレーションシステムが映し出されていた。

部屋の照明が落とされる。

誰も話さない。

画面には一行だけ表示されている。

『PROJECT EDEN 統合シミュレーション開始』

静かな電子音が響いた。

数秒後。

膨大な計算が始まる。

月の地形。

岩盤の強度。

太陽光の当たり方。

気温の変化。

ロケット輸送能力。

ロボットの故障率。

通信の遅延。

電力消費。

資材の不足。

何百万という条件が同時に計算されていく。

悠真は思わずつぶやいた。

「これだけの条件を、人間だけで考えるのは無理ですね……。」

佐藤が静かに答えた。

「だからAIがいるんです。」


百万通りの未来

画面に数字が表示される。

試行回数 1,000,000

さらに増える。

5,000,000

10,000,000

AIは都市の建設方法を何度も変えていた。

地下を深く掘る。

浅く掘る。

発電所の位置を変える。

居住区を移動する。

輸送回数を変える。

ロボットの数を変える。

一つ変更するたびに、

未来が少しずつ変わっていく。

まるでAIが、何百万回もの「未来」を体験しているようだった。


人間の発想を超える

数時間後。

AIは最初の結果を表示した。

白石が目を細める。

「……そう来たか。」

悠真が画面を見る。

地下都市の完成予想図だった。

しかし、誰も予想していた形ではない。

居住区が中心ではなかった。

一番中心にあったのは、

地下工場

だった。

水野が驚く。

「工場が中心?」

AIの説明が表示される。

都市は建物ではなく、修理能力から成長する。

部屋が静まり返る。

さらに文章が続く。

工場が停止すると都市は成長できない。

したがって、最優先で守るべき施設は地下工場である。

悠真は息をのんだ。

誰もそんな発想はしていなかった。


町ではなく生命体

AIはさらに解析を続ける。

居住区。

農業区画。

発電施設。

研究施設。

すべてが地下工場を中心に円形に配置されていく。

佐藤がゆっくり言った。

「人間は街を建物で考えます。」

「でもAIは違う。」

「街を、一つの生命体として考えている。」

白石は静かにうなずいた。

「心臓が止まれば人は生きられない。」

「AIは工場を、都市の心臓だと判断したんだ。」


成功確率

スクリーンに、新しい数字が表示される。

完成予測成功率

部屋の全員が息を止める。

数字がゆっくり止まった。

97.4%

悠真が思わず立ち上がる。

「そんなに高いんですか。」

しかし白石は首を横に振った。

「違う。」

「97.4%なのは、都市が完成する確率ではありません。」

画面が切り替わる。

第一段階成功率 97.4%

つまり。

最初の探査。

最初の発電。

最初の地下工場。

そこまでの成功率だった。

都市完成までは、まだ長い道のりが残っている。


AIの提案

最後にAIは、一つのメッセージを表示した。

推奨事項

全員が画面を見る。

そこには短い文章だけが並んでいた。

「ロボットを増やす前に、ロボットを作る設備を増やしてください。」

「居住区より、修理設備を優先してください。」

「輸送能力より、自給能力を優先してください。」

白石は静かに笑った。

「AIらしい答えだ。」

「人間なら、まず家を建てたがる。」

「でもAIは違う。」

「未来を維持する仕組みから造れと言っている。」


最後の判断

会議室は静まり返っていた。

AIは最適解を示した。

しかし。

白石は画面を閉じる。

悠真が驚く。

「採用しないんですか?」

白石は首を横に振る。

「違います。」

「AIは答えをくれました。」

「でも。」

「未来を選ぶのは人間です。」

その言葉に、全員がゆっくりとうなずいた。

AIは未来を計算できる。

しかし。

未来に責任を持つことは、人間にしかできない。

それがPROJECT EDENの原則だった。


第16章へ

その夜。

未来設計室の窓から月が見えていた。

白石は一人、静かに月を見つめていた。

その時、端末が鳴る。

送り主は、国際宇宙協力機構準備委員会。

件名は一行だけだった。

『PROJECT EDENについて、正式提案を希望します。』

白石はゆっくり目を閉じた。

構想は終わった。

次に始まるのは、世界を動かすための交渉だった。

PROJECT EDENは、ついに机上の計画から、人類の計画へと歩み始めようとしていた。

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