PROJECT EDEN 第13章

AI・プログラミング

第13章

運命の一枚

未来設計室。

部屋の照明が落とされ、大型スクリーンいっぱいに一枚の画像が映し出された。

それは、最新の月周回探査機が撮影した月の南極地域だった。

以前よりもはるかに鮮明な画像。

クレーターの縁。

尾根の高さ。

谷の深さ。

すべてが立体的に表示されている。

白石は静かに言った。

「今日、この中からPROJECT EDEN最初の建設候補地を決めます。」

部屋の空気が引き締まった。


条件は四つ

白石はホワイトボードに四つの項目を書いた。

第一条件 電力

長時間太陽光を受けられること。

第二条件 水

氷が存在する可能性が高いこと。

第三条件 安全性

地下空間を構築しやすい岩盤であること。

第四条件 輸送

着陸しやすい比較的平坦な地形が近くにあること。

「どれか一つでも欠ければ、この場所は候補から外します。」


AIによる解析

佐藤がスーパーコンピューターの解析画面を映した。

画面には数百万という数字が高速で流れている。

「探査機から送られてきたデータだけではありません。」

「温度。」

「地形。」

「日照時間。」

「重力。」

「過去の探査結果。」

「地質。」

「すべて統合しています。」

悠真が驚く。

「全部AIが解析するんですか。」

「はい。」

「人間では数か月かかる計算を、数時間で終えます。」

画面には南極一帯が色分けされていく。

赤。

黄。

緑。

「緑ほど条件が良い場所です。」


一つだけ残った場所

解析が終わる。

画面には、広大な南極地域の中で、一か所だけ深い緑色に光る地点が残った。

部屋が静まり返る。

「ここです。」

佐藤が指差した。

クレーターの縁から数キロ。

近くには永久影。

少し離れた場所には平坦な地形。

「電力。」

「資源。」

「輸送。」

「地下。」

四つの条件が、最も高い評価になっていた。


まだ分からないこと

しかし、水野が口を開いた。

「一つ問題があります。」

スクリーンには地下断面図が映る。

途中から灰色になっている。

「地下は見えません。」

誰もが黙った。

「岩盤があるのか。」

「空洞があるのか。」

「断層はないのか。」

「これは探査しなければ分かりません。」

白石は静かにうなずいた。

「だから。」

「次は現地調査です。」


一番最初に降り立つ仲間

悠真が尋ねる。

「最初の探査隊は何人ですか。」

白石は微笑んだ。

「人間は行きません。」

スクリーンに小型ロボットが映る。

四輪ローバー。

六脚歩行ロボット。

小型掘削ロボット。

飛行ドローン。

「この四種類です。」

水野が説明する。

「車輪は長距離移動。」

「脚は岩場。」

「ドローンはクレーター内部の観測。」

「掘削ロボットは地下調査。」

「それぞれ得意分野が違います。」

「全員で一つの探査隊になります。」


名前をつけよう

議論が終わるころ。

若い研究者が笑いながら言った。

「候補地なんて呼び方では味気ないですね。」

「コードネームを付けませんか。」

部屋が少し和やかな雰囲気になる。

様々な名前が挙がる。

「Moon One。」

「New Hope。」

「Genesis。」

白石は少し考えてから言った。

「まだ都市ではありません。」

「まだ街でもありません。」

「でも。」

「すべてはここから始まる。」

ホワイトボードに静かに書く。

『Site-01』

「まずはこれで十分です。」

「名前は、人が住み始めてから付ければいい。」

悠真はその言葉に深くうなずいた。

都市とは建物ではない。

人が暮らし、歴史が生まれて初めて、本当の名前を持つのだ。


世界から届いたメッセージ

会議が終わる直前。

未来設計室の通信端末に、新しいメールが届いた。

送信者は、前回の国際会議に参加していた研究者たちだった。

件名は共通している。

「参加を希望します。」

アメリカ。

ドイツ。

フランス。

カナダ。

オーストラリア。

インド。

ブラジル。

韓国。

十数か国から、次々とメッセージが届く。

悠真は思わず息をのんだ。

「世界が……動き始めた。」

白石は静かに画面を閉じる。

「いや。」

「まだ始まったばかりです。」

「ここからが、本当のスタートです。」


第14章へ

数日後。

未来設計室に一つの木箱が届いた。

送り主は、日本の材料研究チームだった。

箱の中には、灰色の小さなブロックが入っている。

「これは……。」

水野が慎重に取り出す。

「レゴリスを使った建築材料の試作品です。」

月の土から街を造る。

その夢が、ついに手のひらに載る現実へと変わろうとしていた。

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