PROJECT EDEN 第16章

AI・プログラミング

第16章

世界への提案

「PROJECT EDENについて、正式提案を希望します。」

その一通の通知は、未来設計室を静まり返らせた。

送り主は、国際宇宙協力機構準備委員会。

世界の宇宙機関や研究機関、企業が参加する新しい協議体だった。

白石は画面を閉じると、ゆっくり振り返った。

「皆さん。」

「いよいよ構想ではなくなります。」

「世界へ提案する時が来ました。」


提案書

数日後。

未来設計室には大量の資料が積み上げられていた。

建設計画。

輸送計画。

エネルギー計画。

AI制御。

地下都市設計。

環境シミュレーション。

安全評価。

悠真は思わず笑った。

「論文じゃありませんね。」

白石も笑う。

「そう。」

「これは、人類への提案書です。」

表紙には、大きくタイトルが書かれていた。

PROJECT EDEN

― 人類共通月面居住基盤構想 ―


一つ目の質問

提案会議。

世界各国から研究者、政府関係者、企業代表が集まっていた。

最初に質問したのは経済学者だった。

「この計画には、どれくらいの費用が必要になりますか。」

会場が静まる。

白石は答えた。

「現時点では正確な金額は誰にも分かりません。」

ざわめきが起こる。

しかし白石は続けた。

「なぜなら。」

「これは一度に完成させる事業ではないからです。」

スクリーンが切り替わる。

第一段階。

探査。

第二段階。

実証実験。

第三段階。

地下工場。

第四段階。

居住区。

第五段階。

都市拡張。

「それぞれを独立した国際プロジェクトとして進めます。」

「十年、二十年という時間をかけ、段階的に積み上げていく計画です。」


費用ではなく投資

経済学者が再び尋ねる。

「つまり、莫大な費用がかかる。」

白石は首を横に振った。

「私はそう考えていません。」

「これは支出ではありません。」

「未来への投資です。」

スクリーンには、地球の写真が映る。

災害。

人口減少。

資源不足。

エネルギー問題。

「PROJECT EDENで開発される技術は、月だけで使われるものではありません。」

完全循環型の水利用。

自律建設ロボット。

AI都市管理。

省エネルギー住宅。

遠隔医療。

資源リサイクル。

「これらは地球でも必要になる技術です。」

「だから月への投資は、地球への投資でもあります。」


国ではなく役割

次に質問したのは政府代表だった。

「どの国が主導するのでしょう。」

白石は笑顔で答えた。

「主導国はありません。」

「では誰が責任を持つのですか。」

「全員です。」

少し笑いが起きる。

白石は新しい図を映した。

そこには国名ではなく、役割だけが書かれていた。

宇宙輸送。

建設。

AI。

通信。

生命維持。

医療。

エネルギー。

資源利用。

「得意分野を持ち寄る。」

「それがPROJECT EDENです。」

「競争ではなく分担。」

「国家ではなく役割。」

「その方が、人類全体にとって効率的です。」


企業は何を得るのか

今度は企業代表が立ち上がった。

「企業は利益を求めます。」

「参加する理由は何でしょう。」

白石は迷わなかった。

「新しい市場です。」

会場が静まる。

「月だけではありません。」

「地球です。」

災害対応ロボット。

自律建設。

循環型都市。

省エネルギー住宅。

極地開発。

砂漠都市。

「PROJECT EDENで生まれた技術は、地球の新しい産業になります。」

「企業は利益を得る。」

「人類は未来を得る。」

「両立できます。」


悠真の提案

議論が続く中、悠真が静かに手を挙げた。

「一つ、提案があります。」

会場が彼に注目する。

「この計画を、宇宙開発として説明するのはやめませんか。」

白石が驚いたように見る。

悠真は続けた。

「これは宇宙の話ではありません。」

「人類の暮らしの話です。」

「だから。」

「名前も変えましょう。」

スクリーンに新しい言葉が表示される。

『人類居住圏拡張計画』

会場が静まり返る。

誰も反対しなかった。

PROJECT EDEN。

それは月面基地建設ではない。

人類の生活圏を、安全に宇宙へ広げる計画だった。


一人の宇宙飛行士

会議の最後。

一人の宇宙飛行士が立ち上がった。

彼は何度も宇宙へ行った経験を持っていた。

「私は宇宙へ行くことを夢見て、この仕事を選びました。」

「だから最初は。」

「人間よりロボットを先に送るという考え方に反対でした。」

会場が静まる。

「でも今日。」

「皆さんの話を聞いて思いました。」

「本当の夢とは。」

彼はゆっくり微笑んだ。

「誰かが命を懸けることではなく。」

「誰も命を懸けなくても、人類が宇宙へ進める未来をつくることなのですね。」

会場に、大きな拍手が響いた。


第17章へ

提案会議から一週間後。

未来設計室に、一通の正式文書が届く。

そこには短く書かれていた。

『PROJECT EDENを国際共同検討課題として採択する。』

白石は静かに目を閉じた。

まだ予算はない。

まだロケットもない。

街もない。

しかし。

人類は初めて、

「ロボットが先に街を造り、人間を迎える」

という未来を、正式な議論のテーブルへ載せたのである。

ここから先は、夢ではない。

歴史が動き始める。

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