AIはなんでもできるというのは妄想です。AIは完璧でないので使わないというのも違います。
電卓やエクセルのような表計算ソフトのように、人間の仕事を手伝ってくれる道具なのです。
たとえば情報を集める。分析するといったことはAIは得意としています。
これまで何千万円もかけていたマーケティング分析も得意です。
クラスター分析なども自動で集合体を作って分析してくれます。
小説にしても人間がアイデアを出さないと書いてくれません。
人間がAIと会話しながら一つの作品を作り上げます。
人間のアイデアとAIの提案を何度も更新しながらの作業となりますのでそう簡単ではありませんが、
自分で手書きしたり、文字を打ち込むより格段と早く作ることができます。
ここでは、わたしの疑問(フィジカルAIがあるのになぜ人が月に行くのか)をAIに手伝ってもらって物語にしました。
PROJECT EDEN
― 人類が知らない月面都市計画 ―
第二章
名刺のない男
2027年4月8日(木)
東京・湾岸エリア
朝の光がカーテンの隙間から部屋に差し込んだ。
高橋悠真は、目覚まし時計が鳴る前に目を覚ました。
机の上には、昨夜の封筒が置かれている。
夢ではなかった。
白い紙を手に取る。
あなたは、人類の次の百年を設計する覚悟がありますか。
たった一行。
それ以上の説明はない。
送り主も書かれていない。
悠真は小さくため息をつき、紙を封筒へ戻した。
「考えても分からないか……。」
そうつぶやくと、いつもどおり会社へ向かった。
研究所では、朝から慌ただしく人が動いていた。
「高橋、おはよう!」
同僚の佐伯誠が、コーヒーを片手に近づいてくる。
「昨日の歩行テスト、見たよ。」
「転びそうになってから立て直したな。」
「ええ。完全に倒れるより、人間らしいと思いませんか。」
佐伯は笑った。
「確かに。」
「人間も転ばないわけじゃないからな。」
二人はテストエリアへ向かった。
ガラス越しに、一台のヒューマノイドロボットが木箱を運んでいる。
途中で足元の障害物を検知し、進路を変えた。
ほんの一秒ほど立ち止まり、最も安全なルートを選ぶ。
悠真はその様子を見ながら言った。
「AIは正しい答えを探すのは得意です。」
「でも、本当に必要なのは……。」
「失敗した後に学ぶことか。」
佐伯が言葉を続けた。
悠真はうなずいた。
「そうです。」
「失敗しないAIより、失敗から学べるAIを作りたい。」
昼休み。
社員食堂のテレビではニュースが流れていた。
「各国が月面開発を加速。新たな国際協力も検討されています。」
ロケットが打ち上がる映像。
宇宙飛行士の会見。
月面基地の完成予想図。
「最近、宇宙のニュースが多いな。」
佐伯が味噌汁を飲みながら言う。
「昔は夢の話だったのに。」
悠真は画面を見つめた。
「夢だからこそ、誰かが現実にするんですよ。」
「お前らしい答えだな。」
佐伯は笑った。
「でも俺は地球で十分かな。」
その一言に、食堂のあちこちから笑い声が上がった。
悠真も笑った。
その時はまだ、自分が数日後に月という言葉を現実として受け止めることになるとは思ってもいなかった。
午後六時。
仕事を終えた悠真が受付へ向かうと、受付係の女性が声をかけた。
「高橋さん、お客様がお見えです。」
「私にですか?」
「はい。」
ロビーには、一人の男性が立っていた。
濃紺のスーツ。
白いシャツ。
黒縁の眼鏡。
年齢は六十歳前後だろうか。
派手さはない。
しかし、不思議と目を引く人だった。
背筋がまっすぐ伸び、周囲の空気まで静かにしてしまうような落ち着きがある。
男性は軽く頭を下げた。
「高橋悠真さんですね。」
「はい。」
「突然お時間をいただき、申し訳ありません。」
声は穏やかだった。
営業マンでも政治家でもない。
どこか大学の教授を思わせる話し方だった。
「私は白石俊一と申します。」
そう言って、一枚の名刺を差し出す。
悠真は受け取った。
そこには、
白石俊一
その名前だけが印刷されていた。
会社名も肩書きも住所もない。
「……これだけですか?」
悠真が尋ねると、白石は少しだけ笑った。
「肩書きは、人によって変わるものです。」
「私は名前だけで十分だと思っています。」
その答えは不思議だった。
しかし嫌味は感じない。
悠真は率直に聞いた。
「昨日の封筒を送ったのは、あなたですか。」
白石は首を横に振った。
「いいえ。」
「では電話は?」
「私ではありません。」
「でも、あなたは封筒のことを知っている。」
「知っています。」
白石は迷うことなく答えた。
「だから、お会いしに来ました。」
二人は研究所の前にある小さな公園へ移動した。
夕日がベンチをオレンジ色に染めている。
白石はベンチに座ることなく、池を眺めながら話し始めた。
「高橋さん。」
「あなたは、なぜロボットを作っているのですか。」
突然の質問だった。
「え?」
「生活を便利にするためですか。」
「会社の利益のためですか。」
悠真は少し考えた。
そして、子どもの頃の記憶を思い出した。
「……人が行けない場所で、人を助けるためです。」
白石は静かにうなずいた。
「その答えを聞いて安心しました。」
「安心?」
「ええ。」
「もし『お金のため』と答えていたら、今日はここで失礼していました。」
悠真は思わず笑った。
「そんな面接があるんですか。」
「あります。」
白石は真顔で答えた。
「私たちの仕事では、一番大切なのは技術ではありません。」
「では、何ですか。」
「何のために、その技術を使うのか。」
その言葉だけは、妙に重かった。
白石は上着の内ポケットから小さな封筒を取り出した。
昨夜のものとよく似ている。
しかし、少し違っていた。
「これは?」
「招待状です。」
「どこへの?」
「まだお答えできません。」
「三日後の午後七時。」
「この場所へ来てください。」
白石は一枚の紙を差し出した。
地図だけが印刷されている。
場所は、東京湾沿いの古い研究施設だった。
「来なければ?」
「それでも構いません。」
白石は穏やかな表情のまま言った。
「あなたの人生は、これまでどおり続きます。」
「では、行けば?」
一瞬だけ、白石の表情が変わった。
「もう、元の人生には戻れません。」
その言葉には、脅しも誇張もなかった。
ただ、事実だけを伝えているようだった。
白石は一礼すると、そのまま歩き去っていった。
悠真は手の中の名刺を見つめる。
裏返す。
何も書かれていない。
そのまま夕日にかざした。
すると、紙の中に隠されていた模様がゆっくりと浮かび上がる。
一本の若木。
その上に、細い三日月。
まるで月が若木を守っているような、不思議な紋章だった。
悠真は思わず空を見上げる。
夕暮れの空には、細い月が浮かんでいた。
偶然なのか。
それとも――。
その答えを知る者は、まだ誰もいなかった。
第二章 終

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